税務ニュースBLOG
消費税不正還付ニュース 2024/9/19
調剤薬局チェーンの消費税不正還付案件
令和6(2024)年9月19日、消費税の不正還付の大型案件について報道されました。
全国で調剤薬局チェーンを展開する企業およびグループ企業が税務調査を受け、2022~2023年の約1年間で16億円の消費税不正還付を行い、大阪国税局に修正申告を行ったとのことです。
修正申告額は重加算税が課され、約23億円の大型案件です。
消費税不正還付の手法
不正と指摘された手法は、グループの薬局間での医薬品の架空取引とのことです。
令和6(2024)年9月20日付の読売新聞の追加報道によると、不正還付のスキームは以下のとおりです。
・調剤薬局については、売り上げの大半を占める処方薬の販売が社会保険診療であるため「非課税取引」
・ただし、販売先が企業や自由診療の客であれば「課税取引」
・「課税取引」の売上の割合を高くみせかけることにより、「課税売上割合」を大きくする
・「課税売上割合(企業への売上/(患者への売上+企業への売上))」を高めることで控除対象となる仕入税額を多く計上して不正還付申告
昨年7月、札幌国税局が北海道内の関連会社で不正の疑いを把握し、大阪や東京など各国税局と連携して広域調査したとのことです。
私見
関連会社間で実態のない医薬品の売買取引を行うことで、社会保険診療の割合が低くなり、課税売上割合が高まります。
その結果、本来であれば控除できない社会保険診療の係る仕入に係る消費税が税額控除され、不正還付が行われました。
消費税は、売上に係る消費税から、仕入に係る消費税を控除して納税額を算出する計算構造です。
そのためグループ間で架空取引をしていた場合、A社の売上はB社の仕入になるため、消費税は架空取引を行っても納税額に影響を及ぼすことがありません。
そのため、今回の事案では、A社の売上に係る消費税は減額調整せずに、B社の仕入税額控除のみ否認したのではないか、と想像しています。
大阪国税局がどのような税務調整を行ったのか気になるところです。
還付額の大きさ
国税庁発表によると、2023年度の消費税不正還付による告発件数は16件、不正還付額は4億5400万円です。
今回の大阪国税局の是正した税額(16億円)規模の大きさが分かると思います。
既に修正申告しているとの報道ですので、税務訴訟で事実関係について確認することはできません。
なぜこのような大型課税案件が国内取引で発生したかについて、今後同様の不正還付が発生しないようにするために、公表する社会的意義があると思います。
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