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金(GOLD)の課税上の取扱い

令和6(2024)年10月15日、金の国内小売価額が過去最高値を更新し、初の14,000円台にという報道がありました。

中東情勢の緊迫化などを背景に、アメリカの金融政策が利下げに転換したことなどが要因とみられています。

「有事の金」は健在のようですが、戦争や災害など世界経済を揺るがすような事態が発生すると需要が高まる傾向があります。

金の価額は、ドル建てを円換算したものであるため、ドル建て金価格の上昇と円安が国内小売価額を押し上げます。

 

金を売却した場合の所得区分

過去にも載せています(2013年2月1日投稿記事)が、金の課税上の取扱いについて、譲渡所得以外の取扱いもあるので例外の扱いについて補足です。

 

金地金(きんじがね)を譲渡(売却)した場合の所得は、原則、譲渡所得として、給与所得など他の所得と合わせて総合課税の対象となります。

 

譲渡所得以外の所得として課税される場合

 

1 事業所得または雑所得

営利を目的として継続的に金地金(きんじがね)の売買をしている場合の所得は、譲渡所得とはならず、その実態により事業所得または雑所得として総合課税の対象となります。

ただし、金地金の売買による課税売上割合を引き上げる消費税の不正還付スキームが使えなくなったため、事業所得または雑所得で申告するメリットはあまりありません。

 

2 申告不要(源泉分離課税)

金投資口座や金貯蓄口座などの場合には、地金の現物の譲渡とは異なり、実態は金融取引に近いことから、金融類似商品の収益として一律20.315%(所得税および復興所得税15.315%、地方税5%)の税率による源泉分離課税となります。

 

この分離課税は、源泉徴収だけで課税が終了しますので、他の所得と合算して確定申告をすることを要しません。

申告をしなければ、扶養親族などに当てはまるかどうかを判定するときの所得金額からも除かれますので、うっかり申告しないように注意が必要です。

 

譲渡所得の場合の計算方法

(1) 所有期間が5年以内のもの(総合課税の短期譲渡所得)

・譲渡価額-(取得費+譲渡費用)=金地金の譲渡益

・{[金地金の譲渡益]+[その年の金地金以外の総合課税の譲渡益]}-譲渡所得の特別控除50万円=課税される譲渡所得の金額

 

(2) 所有期間が5年を超えるもの(総合課税の長期譲渡所得)

・譲渡価額-(取得費+譲渡費用)=金地金の譲渡益

・{[金地金の譲渡益]+[その年の金地金以外の総合課税の譲渡益]}-譲渡所得の特別控除50万円=譲渡所得の金額

・(譲渡所得の金額)× 1/2 = 課税される譲渡所得の金額

 

(1)と(2)の両方の譲渡益がある場合には、特別控除額は両方合せて50万円

が限度で、(1)の譲渡益から先に控除します。

 

事業所得または雑所得の場合の計算方法

金地金の売却額から買った金額を控除した金額に、その他の販売管理費等を控除して所得を計算します。

300万円以上の売買があるなど、事業的規模の場合、雑所得ではなく、事業所得として青色申告の場合には青色所得控除65万円も適用できます。

譲渡所得、事業所得、雑所得にしても、累進課税の適用となりますので、最大55%の在負担が生じます。
金地金のキャピタルゲインを得る年は、給与所得などその他の所得を合算した累進税率がどの程度か事前に確認しておかないと、想定していたほどの投資効果がなくなるのでその点注意が必要です。

 

金、株式の譲渡等にかかる税金のご相談は、御茶ノ水の大向税務会計事務所までお問い合わせください。

 

 

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