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仮想通貨大規模税務調査-関東信越国局管轄
令和3(2021)年10月3日付けの日本経済新聞によると、関東地方の個人を中心に仮想通貨の一斉税務調査が行われ、数十人に対して14億円の申告漏れが指摘されたとのことです。
今回重点調査の対象となったのは「エイダ」の売買で利益をあげた埼玉、栃木、新潟、長野の個人であり、重加算税などの追徴課税額は6.7億円。
エイダは、平成29(2017)年から売買が始まり、令和3(2021)年に急騰した仮想通貨です。最近まで海外での取引が主で日本の仮想通貨業者の取り扱いはありませんでした。
ネット上では、仮想通貨の利益を圧縮する裏技紹介などのサイトがあり、セミナーでも「仮想通貨から仮想通貨への交換は非課税」とし、顧客を信頼させて手数料を稼ぐビジネスが横行しているようです。
こういった節税手法のほとんどは、グレーな情報のなかにウソの情報が混在しています。グレーな情報だけで税務リスクを検討し、ウソの情報を見抜けずに税務申告を行った人は、税務調査の対象となったときに、その中に含まれるウソの情報に泣かされることになります。
税務調査が行われた際には、税法上の論理と事実認定を自ら組み立て反論しなければなりませんが、セミナーに参加された方々はそこまで想像できているでしょうか。
国税当局は、仮想通貨関連の税務調査を重点施策として位置付けています。税務調査が入る可能性が低いと思って節税セミナーを鵜呑みにして申告すると痛い目にあうことになります。
また、海外のサーバーで取引を行えば申告しなくてもよい、というような不正確な情報を信じてしまい申告していない個人もまだまだ多いように思います。
仮想通貨に対する適正な税務処理の啓蒙活動が引き続き国税当局に求められています。複雑な仮想通貨取引を適正に税務申告処理できる税理士の数も不足している(能力の問題ではなく、手間と報酬の問題による)のが現状です。
仮想通貨はこれまでの人類の貨幣概念を一新するほどの可能性に満ちた技術であり大いに期待していますが、現時点ではただの投機対象です。国家間の思惑に左右され、国によって税制の取扱いも異なることから税務リスクが高く、貨幣としての利用価値は低い。今後も税務リスクは高くても投機機会をつかみたいという一定の層を中心として取引は拡大していくことが予想されることから、適正な納税を促す啓蒙活動が今後も求められます。