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簡易TP調査
税務通信3669号に「簡易TP調査」という用語が記載されていましたので解説します。
通常の移転価格調査に対して、IGS(Intra-GroupService:企業内役務提供)に調査対象取引を絞った移転価格調査を便宜的に「簡易TP調査」と呼ぶそうです。
簡易TP調査は、一般の法人税調査の中で行われ、調査件数も増えているとのことで、国外に関係会社を有する中堅企業にも注意が必要でしょう。特に日本の親会社が海外子会社の「財務、会計、法務、情報通信サービス、人事、研修、福利厚生、広報」のような管理サポート事務を行っている場合、そのサポート事務に対する役務提供対価が回収されているかが、簡易TP調査において着目されますのでチェックしておきましょう。
簡易TP調査においては簡便法により独立企業間価格(ALP:Arm’s Length Price)を算定することが認められるとのことです。本来は、そのIGS取引と類似の取引である比較対象取引を選定してベンチマーク分析を行いALPを算定するのですが、IGSの比較対象取引はほぼ相互協議や事前確認で合意されている比較対象企業が存在しているので、経済分析する手間を省いて簡便的にマークアップ率を設定できるとしています。
<簡便法によるALP>
管理サービスIGS取引 → 総原価×105%(重要でないものは総原価でマークアップしなくて可)
技術指導IGS取引 → 総原価(マークアップなし)
要は、一般の法人税調査において、子会社に対して無償で役務提供取引を行っていたら移転価格課税又は寄付金課税します、ということです。一般の法人税調査ではベンチマーク分析を行うことができないため、簡便的に調査し課税します、ということです。これは、別に海外の親子間取引に限った話ではなく、国内企業同士においても同様な話であり、無償で役務提供を行えば、移転価格課税を適用しなくても寄付金課税の適用が可能です。
IGSの総原価を算出するにあたっては、直接費以外にも間接費も配賦集計しないとならないため、実はマークアップ率の算定よりも、総原価の集計が企業の経理部にとって大変な作業となります。対応としてはIGS総原価額の集計方法を各社の実情に応じた簡便的な方法を社内で統一的に取り決めて機械的に集計し、定期的に子会社へ費用請求を行う経理体制にしておくとよいでしょう。
IGSサービスを無償提供だと寄付金課税されますので、寄付金課税は絶対に避け税務リスクの最小化を図ることがよいと思います。