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二審も課税処分取り消し-75億円ホンダが勝訴(東京高裁) 2015/5/13
ブラジルの現地法人との取引をめぐり、国内所得の過少申告を指摘されたホンダが、国税当局による追徴課税処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が平成27(2015)年5月13日東京高裁であり、ホンダ側の主張を認めて約75億円の課税処分を取り消した一審判決を支持し、国の控訴を棄却しました。
国税当局は、ホンダと現地法人の間の取引価格が不当に低かったとみて、同業のブラジル企業を比較対象としてホンダの所得を算定し直し課税した案件ですが、東京高裁は、自由貿易地域にあった現地法人が受けていた税の優遇措置について「利益率に重要な影響を及ぼしていた」と判断し、一審と同じく、同地域外にあったブラジル企業との比較は誤りだとして、国側の主張を退けました。
ブラジルのみならず、アジア各地域においても企業誘致のための税制優遇地域が存在しています。
それらの地域で工場を建設し、事業を行えば数年間の税金免除や軽減税率の適用などの様々な恩典を享受することができました。
そのため、日本の税務当局は本来日本で納税すべき税金が海外に流出しているとする蓋然性があると判断し、積極的な移転価格課税を行っていました。
今回の判決は、当時の当局の比較対象企業の選定手法に誤りあり、としていますので、現在訴訟中や相互協議中である他の移転価格課税事例にも大きな影響が出るものと思います。 東京国税局が上訴するかどうか、要注目です。
■移転価格調査とは?
通常の税務調査とは異なり、移転価格調査は、国外関連者との取引価格が適正か否かのみを調査する目的で、1年以上の期間をかけて実施されます。
1年以上にわたって通常業務のほかに調査対応を行わなければならず、経理担当者の負担は相当のものになります。
なお、調査対象期間は6年間であり、6年分の取引価格を修正されることから、国外への所得移転が指摘された場合、追徴税額が巨額となります。
また、相手国においては、修正前の取引価格にて税務申告が終了していることから、移転価格課税を受けた場合は日本と相手国において二重課税状態となり、キャッシュアウトが巨額となるため、企業経営に多大な影響を与える税務リスクとなります。
そのため、移転価格調査が入った場合には、移転価格税制の実務経験のない税理士で対応することはお勧めしません(対応できません)。外資系企業及び大手の国内企業が移転価格調査が一巡し、当局の移転価格課税の課税経験値が上がってきています。移転価格調査を行った実績のある調査官が増えていますので、近年では、中堅企業も移転価格調査の対象となっています。