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無記名の割引金融債(割引債)と税務調査
無記名国債と税務調査と言えば、金丸信の脱税事件や新日本製鉄の名誉会長等の相続税脱税が有名ですが、脱税事件となるケース以外にも、任意税務調査においてよく問題となっているようです。
当事務所への税務相談でも、無記名の割引債に係る問い合わせが多くありますので、ご参考までに国税不服審判所の裁決事例の判断を紹介しておきます。
以下、国税不服審判所の判断(要約)です。
(平成4年2月26日裁決事例集No.43)
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無記名の貸付信託、割引債(以下、「無記名割引債等」)の所有者がだれであるかについては、特段の事情がない限り、
① その証書等を現実に支配管理している者がその無記名割引債等の所有者との一応の推定が生じるものと解すべきである。
② その無記名割引債等の取得資金を支出した者が明らかでない場合には、その無記名割引債等を現実に支配管理している者が所有者であるとみるのが相当である。
③ その無記名割引債等を他に贈与したことの事実も認められない場合には、その無記名割引債等を現実に支配管理している者が所有者であるとみるのが相当である。
納税者側は被相続人は無記名割引債の設定等の窓口になっていたにすぎず、その無記名割引債の管理運用をすべて被相続人が行っていたものではない旨主張しましたが、次の理由により、納税者がその無記名割引債の管理運用に関わっていた事実を認めるに足る証拠はないとして、被相続人の相続財産として事実認定しました。
<理由>
① 被相続人(昭和62年2月死亡)の同居女性の証言
「被相続人が無記名割引債等の管理運用を行っており、その無記名割引債等は被相続人が借りた銀行の貸金庫に保管していた。」
「その無記名割引債等を昭和62年1月に貸金庫から持ち出し、書換えを済ませ、銀行に持参し、不服審査請求人(以下、請求人)に渡した。」
「被相続人の実印、印鑑証明、預金通帳、財布、貸金庫の鍵3本を昭和62年1月に請求人に渡した。」
② 銀行担当者の証言
「取引は全て被相続人の指示により行い、無記名割引債等の引き渡しは被相続人に自宅で同居女性の立会の元に行った。」
「被相続人は無記名割引債等を銀行の貸金庫に保管していた。」
③ 銀行支店長の証言
「本件無記名割引債等は被相続人のものと認識していた。」
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無記名割引債等をお持ちの方がどうすれば良いか分からないというお問い合わせが多かったので、今後、相続発生の際のご参考の一助となればと掲載しております。
ご相談のある方は、お気軽に池袋の大向税務会計事務所までご連絡ください。