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処理水、海洋放出決定へ

令和3(2021)年4月13日に日本政府はトリチウムを含む処理水の処分方法を海洋放出とする方針を正式決定しました。
処理水の海洋放出により、漁業者は国家により財産権を(漁業権)一方的に将来にわたって侵害されることとなるので、当然、処理水の海洋放出に絶対反対の姿勢となります。
風評被害による損害の補償問題というよりも、そもそも漁業権侵害罪を構成しているので違法な行為なのではないか思うが、どうなのでしょうか。
いったん海洋放出を行うこととなると、最初は海洋放出するトリチウムの量を抑えて安全性を広報したうえで実施し、国民の関心が薄れてきたタイミングで海洋放出するトリチウム量を廃炉処理に必要な量放出され、それが廃炉完了まで継続して行われることになるでしょう。
廃炉完了が私たちの世代で終了しない可能性がある以上、トリチウムの海洋放出も後世代まで続くこととなるので、私たちの世代はその放出決定に相応の責任を負うことになります。
この問題は、原発事故処理に伴う処理水の放出であるので、原発事故が発生していないフランスや韓国どの他国のトリチウムの放出水準と比較して議論することには意味がないと考えます。
この問題を考えるにあたっては、トリチウムの安全性の水準を検討するよりも、まずは科学的見地によって海洋放出以外の手段がないか検討を尽くすことだ先だと思います。
本当に海洋放出しかないのかどうかを科学的見地のみで検討し、政治的・経済的な要素は一切除いた純粋に科学の問題として検討することが必要です。
そして、海洋放出以外のアプローチがある場合、海洋放出以外のアプローチを選択した場合のロードマップを国民に示し、その負担を国民が受け入れるかどうか問うべきでしょう。

 

<多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会の報告書>
018_00_01.pdf (meti.go.jp)

 

この報告書では、タスクフォースの検討結果として、地層注入、海洋放出、水蒸気放出、水素放出、地下埋没のそれぞれのタスクを行った場合の費用や規制、技術的成立要件について検討していますが、政治的・経済的な要因は一旦除いて科学的見地のみで検討した場合、他の選択肢が本当にないのかの説明がありません。
これでは科学的見地のみで検討を行っているとはいえないでしょう。思い出されるのは、昨年マスクの供給が不足した時に、経産省の特別チームがアベノマスクに税金投入すると政策決定したときの絶望感です。そのときの検討レベルと同程度の検討をもって科学的見地による検討としていないかと不安になります。国民の不安を払しょくするためにはより丁寧に検討してきたことを示す必要があります。
海に不要物を捨てるという行為を選択する性質の人類に、将来にわたって適正な水準で適正に不要物を捨てるという自己抑制機能を期待してはいけません。海洋放出を決定した時点で、世代を超えた将来にわたって、日本政府又は東京電力やその下請企業が放出を自己抑制できないリスクは考慮しなければなりません。
科学的見地から世界の知恵を動員しても海洋放出以外の選択の余地がない場合、そのことについて政府は国民に丁寧に説明し理解を得なければなければなりません。海洋放出以外の科学的な手段がないことについて国民の理解を得てはじめて、海洋放出をどのように安全な水準で運用していき、損失の補償をどうするかという議論になります。
ここでいう損失は、風評被害による漁業者への経済補償のみならず、漁業権を将来にわたって侵害することに対しての補償、日本が世界に対して失う信用損失を指します。
政府としては、諫早湾の干拓での20年以上にわたる裁判の前例があるため、漁業者との長期の訴訟についても織り込み済みでの政策決定なのでしょうが、処理水の問題に対しては、「海洋放出」の一択であるという明確な説明が国民に対して絶対に必要です。

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